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クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.15

ギャラントなひととき

〜ベルリンのバッハとロンドンのバッハ〜

20131115日 1900 近江楽堂

主催:クラングレーデ

クラングレーデ(Klangrede)

クラングレーデとは「音の言葉、音による対話」という意味です。

クラングレーデが演奏するのは、三百年から二百年も昔の、はるかに遠いヨーロッパの音楽です。バロック音楽は単なる「ヒーリング音楽」ではありません。その音楽を聴いて呼び起こされるのは、時代や場所に関わらない普遍的な人間のさまざまなアフェクト(情感)です。アフェクトによってそれぞれの「心象風景」を心に描き出すのです。作曲家が作品を書いた当時に使われていた楽器を使って演奏し、お客様と共に同じ情感を味わう、そんな演奏体験を目指して活動しているアンサンブルです。  

------ クラングレーデ(音の言葉)

 

出演

 

国枝俊太郎 Shuntaro Kunieda フラウト・トラヴェルソ 

リコーダーを安井敬、フラウト・トラヴェルソを中村忠の各氏に師事。1995年開催の全日本リコーダー・コンテスト「一般の部・アンサンブル部門」にて金賞を受賞。これまで東京リコーダー・オーケストラのメンバーとしてNHK教育テレビ「ふえはうたう」「トゥトゥアンサンブル」に出演、CD録音にも参加する。
現在はバロック室内楽を中心に、古楽器オーケストラによる数々の演奏会に出演するなど、幅広く活動している。バロックアンサンブル「クラングレーデ」「ムジカ・レセルヴァータ」、ルネサンス・フルート・コンソート「ソフィオ・アルモニコ」メンバー。

 

大山有里子 Ariko Oyama オーボエ

大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動し、「大阪コレギウム・ムジクム」のソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。その後ピリオド楽器(バロック・オーボエ)による演奏に専念し、バロックアンサンブル「アルモニー・アンティーク」等で活動。「クラングレーデ」では2008年結成時よりメンバー。現在、関東を中心に活発に活動している。「ダブルリーズ」メンバー。

 

石川和彦 Kazuhiko Ishikawa ヴァイオリン

大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、ストラスブール音楽院にてバロック・ヴァイオリンとバロック音楽の研鑽を積む。フランスで“Le Parlement de Musiqueなどで活躍、現在、室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・プィステー、桐山建志各氏に師事。

 

原田純子 Junko Harada ヴィオラ

洗足学園音楽大学卒業。ヴァイオリンを鈴木嵯峨子氏・海野義雄氏に、ヴィオラ・室内楽を岡田伸夫氏に師事。 卒業後古楽器での演奏に興味を持ちバロックヴァイオリン・ヴィオラを渡邊慶子氏に師事する。また都留・札幌・福岡での古楽祭、フランスでのマスタークラスに参加し研鑽を積む。
モダン・バロックのヴァイオリン、ヴィオラ奏者として室内楽を中心に活動している。弦楽合奏団アンサンブルデュナミスメンバー。

 

永瀬拓輝 Hiroki Nagase チェロ  

桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)を経て桐朋学園大学音楽学部卒業。その後、東京芸術大学古楽科別科修了。 来春、東京藝術大学大学院古楽専攻に入学予定。2012Stage de Musique Baroque de BARBAST(フランス)にてR・ツィパーリング氏のマスター・クラスを受講。
これまでにチェロを金谷昌治、花崎薫、倉田澄子 の各氏に、バロック・チェロを武澤秀平、E・ジラール、酒井 淳、鈴木秀美の各氏に師事。

 

伊藤一人 Kazuto Ito チェンバロ(客演)

東京藝術大学大学院修了。チェンバロ・通奏低音を岡田龍之介、鈴木雅明、大塚直哉各氏に師事。ボブ・ファン・アスペレン氏その他のマスタークラスを受講。これまでに岡田龍之介、江崎浩司両氏と共演したほか、古楽の森コンサート、アンサンブル室町公演、〈NHK交響楽団メンバーによる室内楽シリーズ〉に参加するなど、チェンバロ・ソロ及び通奏低音奏者として演奏活動を行っている。201011年度、NHK文化センターにてバロック音楽の魅力を伝える講座を担当。12年、CD「江崎浩司/ヘンデル:オーボエソナタ集」(フォンテック)に参加。

 

 


クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.15

ギャラントなひととき

〜ベルリンのバッハとロンドンのバッハ〜

20131115日 1900 近江楽堂

 

 2008年から活動を開始してきた私どもクラングレーデですが、早いもので今回が15回目の公演となります。
9回までは全員での公演でしたが、それ以降はそれぞれのメンバーが企画したこじんまりした編成のものが続きました。
しかも、その中には古典派から初期ロマン派の室内楽を取り上げるもの、さらにはヴァイオリン4人だけによるものまでありました!
そんなわけで、今回は実に久々(20124月以来!)の全員での公演となります。今夜はJ.S.バッハの二男エマヌエルと、末息子クリスティアンに焦点を当てたプログラムです。

バロック時代から少しずつ姿を変えて、よりシンプルで親しみやすくなっていった音楽の数々、それを作曲した作曲家の姿に思いを馳せながらお楽しみいただければ幸いです。

 

プログラム

(解説  国枝俊太郎)

 

        J.G.ヤニチュ:室内ソナタ ニ長調「エコー」op.5-1

Johann Gottlieb Janitsch (1708-1762)Suonata da camera D-Dur Op.5-1

Adagio e mesto / Allegro moderato / Allegretto

J.G.ヤニチュはシュヴァイトニツ(現在のポーランド領シフィドニツァ)に生まれて、1729年からフランクフルト・アン・デア・オーデル大学で法律を学びました。同じ年にフリードリヒ・ヴィルヘルム1世の前で自作のセレナードを演奏して、2年後には皇太子フリードリヒ(のちのフリードリヒ大王)の前でも同様の演奏会を行いました。1740年にフリードリヒが即位したのをきっかけに、ヤニチュは楽団のコントラバス奏者として生涯をベルリンで送ることになります。「エコー」というタイトルを持つ「室内ソナタ ニ長調」を含むop.51757年に出版されましたが、各楽器のやり取りが実に軽妙に描かれていて、明るく爽やかな空気を感じます

 

 C.Ph.E.バッハ:オーボエ・ソロ ト短調 Wq.135

Carl Philipp Emanuel Bach (1714-1788)Hoboe solo g-moll Wq.135

        Adagio / Allegro / Vivace

C.Ph.E.バッハは父親であるヨハン・ゼバスティアンと先妻マリア・バルバラの間に生まれて、バロックから次の時代への橋渡しとなるような重要な作品の数々を生み出しました。長男のフリーデマンと同様に偉大な父親から音楽を学んで、1734年からはフランクフルト・アン・デア・オーデル大学で法律を学びました。1731年以降に本格的な作曲活動を開始しましたが、「オーボエ・ソロ ト短調 Wq.135」もこの頃に書かれました。同時代の他の作曲家が作った曲と比べても、彼がいかに豊富なアイディアを持ち合わせていたかがわかります。フリードリヒ大王が組織した宮廷楽団に鍵盤楽器奏者として雇われてからも、彼の創作意欲は衰えを知りませんでした。そんな彼のアイディアの泉は、後に活動の拠点をハンブルクに移してから新たな花を咲かせることになります。

 

        J.G.グラウン: ヴィオラ、ヴァイオリン、通奏低音の為のトリオ・ソナタ  (C.Ph.Eバッハ編)変ロ長調

Johann Gottlieb Graun (1703?-1771)Trio sonata B-Dur for Viola,Violin and Basso Continuo (arr.C.P.E.Bach)

        Adagio / Allegretto / Allegro non troppo

J.G.グラウンはイタリアでタルティーニにヴァイオリンを学んで、F.ベンダやフリーデマン・バッハなどの優れた弟子も育てました。彼もヤニチュやエマヌエル・バッハと同様、ヴァイオリニストとしてフリードリヒ大王の宮廷楽団に雇われていて、この楽団のコンサートマスターとして、終生その地位にありました。「ヴィオラ、ヴァイオリンと通奏低音のためのトリオ・ソナタ 変ロ長調」は、1740年以降にヴィオラとオブリガート・チェンバロのためのソナタとして作曲されたものを、後にエマヌエル・バッハがこの編成に編曲したものです。チェンバロの右手パートがヴァイオリンに置き換えられた事で、ヴィオラとの絡みがより濃密になって、3声部の対話がさらにくっきりとしています。原曲とはまた一味違った魅力を引き出したエマヌエル・バッハは、やはり類まれなる才能の持ち主だったに違いありません。

 

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 J.C.バッハ:五重奏曲 ニ長調 Op.22-1

Johann Christian Bach (1735-1782)Quintet D-dur Op.22-1

Allegro / Andantino / Allegro Assai

J.C.バッハは2度目の妻であるアンナ・マグダレーナとの間に生まれて、おそらく1744年頃に父親からクラヴィーア演奏や理論などを学び始めたようです。父が1750年に亡くなるとベルリンに移って、兄のエマヌエルからクラヴィーアの演奏法や作曲を引き続き学びました。1754年にはイタリアに渡って多くのオペラを作曲しましたが、ロンドンに移った1762年以降も引き続きオペラの作曲に力を入れます。1764年からはC.F.アーベルと共に「バッハ-アーベル・コンサート」という名の公開演奏会を開催して、多くの作品をここで発表しました。ちょうど同じ頃に幼いモーツァルトがロンドンに滞在していて、クリスティアンと親交を結んでいましたが、彼は作曲家としても大きな影響を受けたようです。「五重奏曲 ハ長調」を含むop.11は、音楽通として知られていたプファルツ選帝侯カール・テーオドルに献呈されました。「五重奏曲 ニ長調 op.22-1」は鍵盤楽器のパートに華やかな旋律が置かれていて、それに他の楽器が彩りを加えるような作りになっています。

 

 C.F.アーベル:トリオ・ソナタ ニ長調 op.16-2

Carl Friedrich Abel (1723-1787)Sonata D-Dur Op.16-2

Allegro Moderato / Andante / Allegro ma non Troppo

C.F.アーベルは父親のクリスティアン・フェルディナントの元で、ヴィオラ・ダ・ガンバの演奏法など、多くの音楽的素養を身に付けました。ライプツィヒやドレスデンで活躍した後、1758年以降は生涯の大半をロンドンで過ごす事になります。1763年から上述のクリスティアン・バッハとの提携が始まって、翌年からの「バッハ-アーベル・コンサート」に繋がります。この公開演奏会は年間1015回のペースで行われましたが、1776年頃から徐々に人気が衰退していって、1782年のクリスティアンの死によって終止符が打たれました。このシリーズの終了と共に彼はロンドンを後にして、再びドイツに活動の拠点を移しました。彼が得意としていた楽器であるヴィオラ・ダ・ガンバは、この頃になると人気が急激に衰えていって、彼の死と共に音楽界の第一線から完全に消えてしまいます。「トリオ・ソナタ ニ長調」を含むop.161783年にベルリンで出版されましたが、ここでは彼の人間的な魅力、心優しい寛容さがそのまま表れています。

 

J.C.バッハ:五重奏曲 ハ長調 op.11-1

  Johann Christian BachQuintetto C-Dur Op.11-1

 

 

 

 

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