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クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.10

洋館で親しむバロック音楽”シリーズ

西洋館で聴く トリオ・ソナタ

20121123日(金・祝)18時開演 横浜市イギリス館

主催:クラングレーデ

協力:アンサンブル山手バロッコ http://www.geocities.co.jp/yamatebarocco

 

クラングレーデ(Klangrede)

横浜山手の洋館での、古楽器によるひとときにようこそおいでいただきました。

クラングレーデとは「音の言葉、音による対話」という意味です。

クラングレーデが演奏するのは、三百年から二百年も昔の、はるかに遠いヨーロッパの音楽です。バロック音楽は単なる「ヒーリング音楽」ではありません。その音楽を聴いて呼び起こされるのは、時代や場所に関わらない普遍的な人間のさまざまなアフェクト(情感)です。アフェクトによってそれぞれの「心象風景」を心に描き出すのです。作曲家が作品を書いた当時に使われていた楽器を使って演奏し、お客様と共に同じ情感を味わう、そんな演奏体験を目指して活動しているアンサンブルです。  

------ クラングレーデ(音の言葉)

 

出演

 

大山 有里子 (バロック・オーボエ)

大山有里子 Ariko Oyama  (バロック・オーボエ)

大阪教育大学音楽科卒業。同大学専攻科修了。オーボエを大嶋彌氏に師事する。卒業後、関西を中心に活動し、大阪コレギウム・ムジクムのソロオーボエ奏者として、バロック時代の作品を中心に数多くの月例演奏会、定期演奏会等に出演する。
そのかたわらピリオド楽器によるバロック音楽の演奏に興味を持ち、バロック・オーボエを始める。これまでに各地でピリオド楽器によるオーケストラやアンサンブルに参加し、現在は関東を中心に活動している。「クラングレーデ」「アルモニー・アンティーク」メンバー。

 

石川和彦 (バロック・ヴァイオリン)

大阪音楽大学器楽科卒業後バロック・ヴァイオリンを始め、コレギウム・ムジクム・テレマンの主な公演に出演。2001年に渡仏し、ストラスブール音楽院にてバロック・ヴァイオリンとバロック音楽の研鑽を積む。フランスで“Le Parlement de Musique”などで活躍、
現在、室内楽やオーケストラでモダン、古楽器とも活発に活動している。ヴァイオリンを曽田義嗣、林泉、佐藤一紀、バロック・ヴァイオリンを中山裕一、フランソワ・フェルナンデス、ステファニー・プィステー、桐山建志各氏に師事。「クラングレーデ」メンバー。

 

西谷直己(ヴィオラ・ダ・ガンバ) ゲスト

桐朋学園大学音楽学部古楽器科卒業。同大学研究科終了。宇田川貞夫、中野哲也の各氏に師事。オランダ、デン・ハーグ王立音楽院にてヴィオラ・ダ・ガンバを W.クイケン氏に、アンサンブルをクイケン兄弟他に師事。 2000 年、ソリストディプロマを取得し、同音楽院を卒業。
帰国後もヨーロッパと日本での演奏活動を積極的に行っている。

 

加久間朋子(チェンバロ)

洗足学園大学音楽学部卒業。チェ ンバロを藤原寿子、故鍋島元子に師事。1974年創設古楽研究会 Origo et Practicaで古楽奏法の研鑽。ミラノ音楽院でE.ファディーニのマスタークラス修了。ソロ、通奏低音奏者として活躍。イタリア、ドイツでソロ公演。 アンサンブル「音楽三昧」メンバーとして、アメリカ公演、CD7枚リリース。08年発売の「音楽三昧//バッハ」が第7回「サライ大賞」CD・DVD部門 賞受賞。現在故鍋島の遺志を受け継ぎ、古楽研究会代表を務める。チェンバロデュオ《キャトル・マン》メンバー、日本チェンバロ協会運営委員。

 

 


 クラングレーデ コンサートシリーズ Vol.10

洋館で親しむバロック音楽”シリーズ

西洋館で聴く トリオ・ソナタ

20121123日(金・祝)18時開演 横浜市イギリス館

 

 

プ ロ グ ラ ム

バロック時代、とても人気のあった「トリオ・ソナタ」は、2つの旋律楽器と1つの通奏低音で演奏される「ソナタ」です。数え切れない程存在する曲の中から今宵は、ヴァイオリンとオーボエを使った「トリオ・ソナタ」を中心に、ソロ・ソナタと共にお楽しみ頂きます。

 

G.P.テレマン:トリオ・ソナタ 変ロ長調 TWV 42:B1

  Georg Philipp Telemann(1681-1767)Trio B-Dur, TWV 42:B1

        Vivace / Siciliana / Allegro

G.P.テレマンは18世紀にヨーロッパで最も人気のあったドイツの作曲家の一人で、極めて多作家で、最近の研究をもってしても明確な数が分からない程に曲を残しました。そのどれもが親しみやすく演奏しやすく、当時人気があった事が納得できます。1曲目の「トリオ・ソナタ変ロ長調」は1718年に出版された「6つのトリオ」集の中の1曲です。テレマンがハンブルクで活躍する前の若い頃の作品ですが、2つの楽器を無理なく扱う手腕は彼ならではです。 

 

G.P.テレマン:オーボエと通奏低音のためのソナタ ト短調 TWV 41:g6

(「ターフェルムジーク」 第3集より)

Georg Philipp TelemannSonata g-moll, "Musique de Table" (III/5) TWV 41:g6

        Largo / Presto-Tempo giusto / Andante / Allegro

2曲目の「オーボエ・ソナタト短調」は1733年のテレマンの最大の代表作「食卓の音楽」の第3集に収められています。この曲集には管弦楽組曲、協奏曲などあらゆるジャンルの曲が収められており、イギリスやスウェーデンから予約注文があった程の人気でした。この曲はオーボエらしいすすり泣きのような哀愁を感じる曲調で、円熟期のテレマンを象徴する斬新さに満ちています。

 

 

J.プラ*:トリオ・ソナタ ニ短調

José Pla(1728-1762)Trio d-moll     

Allegro Molto /Andante / Allegro Assai

*兄のJuan Batista との共作の可能性もある

次は聞き慣れない名前の「プラ」というスペインのオーボエ奏者・作曲家です。兄弟で作曲をしており、弟のホセが作曲したとなってはいますが、作風が似ている兄のジョアン=バティステと共作した可能性もあり、あまり良く分かっていません。ただ諸外国での名声は素晴らしくオーボエの腕前は高く評価されていました。 曲調はバロックと古典派が混ざり合ったような所があり、きびきびした両端楽章に対して、中間楽章は古典派を先取りしたような歌謡性を感じさせる曲になっています。

 

 

F.ジェミニアーニ:トリオ・ソナタ 第2番 ニ長調 「トランケールの茂みで」

Francesco Geminiani (1687-1762)Sonata in D major, "Bush aboon Traquiar"

 F.ジェミニアーニはイタリア出身で、英国で活躍したヴィルトゥオーゾ(超絶技巧)のヴァイオリニスト・教師・作曲家です。彼の「ヴァイオリン奏法論」はあまりにも有名であり、現在でもバロック・ヴァイオリンを勉強する人にとっては当時の奏法・趣味を知る上でなくてはならないものとなっています。そのジェミニアーニが作曲した、一風変わった不思議な曲をお届けします。昨今アイリッシュ音楽も静かな人気がありますが、こちらはスコティッシュ。彼の妻はスコットランド人だった事もあり、このような曲も作曲したようです。この曲は”A Treatise of Good Taste in the Art of Musick”という本に入っている、「スコット・エア(フランスに倣って宮廷で作りだされた王宮歌曲)」によるトリオ・ソナタの中の一曲で「トランケールの茂みで」というタイトルがついています。オリジナルはフルートあるいはヴァイオリンの組み合わせですが、本日はヴァイオリンとオーボエで演奏します。単一の楽章の中で素朴なスコットランド風の主題を変奏していきます。

 

 

G.F.ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ 第8番 イ長調 Op.1-14 HWV 372

              *別の分類では:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 "Roger" Op.1-10

 George Frideric Handel (1685-1759)Violin Sonata No.8 in A major, HWV 372

        Adagio / Allegro / Largo / Allegro

最後はG.F.ヘンデル。バッハと同じ年にドイツのハレで生まれ、イタリアでオペラの作曲家として名を成したのち、イギリスに帰化して「メサイア」などの宗教曲を数多く作曲しました。本日演奏する「ヴァイオリン・ソナタOp.1-14」は少々説明が要る曲です。ヘンデル達の時代、まだ今のように著作権というものがなく、作曲家の許可なしに海賊版のようなものが出来てしまうというような事がありました。1730年に出版された“Roger”版はもともとヘンデルの許可を得ず出版したもので、このソナタはOp.1-10だったのですが、1732年の”Walsh”改訂版(Op.1-14に変更)にはこの曲に関して、「ヘンデル氏の作品にあらず」という但し書きがあったりして当時から偽作の疑いがありつつも、他のソナタも自筆譜が散逸しているので、未だ結論は出ていません。曲調はヘンデルの真作としても差し支えない程、彼らしい美しい旋律が心地良い曲です。

 

G.F.ヘンデル:トリオ・ソナタ ト短調 HWV 393

George Frideric HandelTrio Sonata in g minor, HWV 393

        Andante / Allegro / Largo / Allegro

最後のトリオ・ソナタはヘンデルの真作で、2本のヴァイオリンの為に書かれていますが、ヴァイオリンとオーボエで演奏します。ヘンデルらしい節度ある曲調に彩られています。

 

 

まだまだ素晴らしい曲は沢山ありますが、本日の演奏会をきっかけに「トリオ・ソナタ」の親密な楽器同士の対話など、このジャンルの魅力を感じて頂ければ幸いです。本日はお越し下さりどうもありがとうございました。(石川和彦)

 

 

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